青い鳥見つけた(Pside)
(アイドルマスターSS・千早編)

 都内某所にある高級レストラン。如月千早の担当プロデューサーは千早と二人でささやかなお祝いを開いていた。千早
が発表した曲「蒼い鳥」が空前のヒットを飛ばし、千早は遂にAランクアイドルとなったのである。
 Aランクアイドルといえば、少なくとも千早の名前を聞いたことが無い人はいないという程の知名度であり、毎日発信さ
れるあらゆるメディアのどこかには必ず千早の名前が載っているという状況である。

 「遅くなったけど、Aランク昇格おめでとう。」
 ワインのグラスを持ち上げ、プロデューサーは千早に言った。実際、ランクアップは少し前にあったのだが、なにしろ仕事
の量が増え、寝る間も無い程の忙しさとなっていた為、お祝いらしいことといえば765プロの事務所で皆とやったほんの小
さなパーティ位だったのである。そこで、ようやく取れた貴重なオフに二人でお祝いの食事をすることにしたのだ。

 「ありがとうございます。プロデューサー。」
 いつもはカジュアルなパンツスタイルの千早も、今日ばかりはフェミニンなスカートで、少しばかりおしゃれをしていた。そ
んな千早の姿はAランクアイドルとしてのオーラを放ち、店の雰囲気にも馴染んでいた。千早の指には先日プロデューサ
ーが贈ったプラチナの指輪が輝いている。

 「Aランクか・・・。あっという間のような、長かったような・・・。」
 ワインを一口飲んだプロデューサーはそう言うと、テーブルの上に置いたグラスを見つめて黙り込んでしまった。
 「あの、プロデューサー?どうかしましたか?」
 少し長い沈黙が続いたので、千早がプロデューサーに尋ねると、プロデューサーはハッと我に返り、千早に答えた。
 「いや、すまない。千早に初めて会った時のことを思い出していたんだ。」
 そう、あの時のことを・・・。

 プロデューサーは大学を卒業した後、小さな会社の営業の仕事に就いた。不景気であったが人手不足で毎日は忙しか
った。そんな日々がそろそろ2年になろうとしていた。
 ある日、彼は得意先回りが早く済んだので、新規開拓の為に飛び込み営業を行っていた。余り良い成果が挙がらない
まま、彼は1軒の雑居ビルの前にいた。古いビルの3階にはビニールテープで「765」とだけ貼ってあった。何の会社だろ
う?と彼はセールスのついでに見てみようと思い、事務所のドアを叩いた。
 
 「どちら様ですか?」
 事務仕事の手を止めて応対に出たのは、ショートカットの美しい事務員だった。一瞬魅入られた様になった彼は正気を
取り戻し
 「え、ええ。今日は大変お得な商品のプランをお持ち致しまして・・・。」
 とカバンから資料を取り出しながら説明を始めようとしたところで
 「あーっ!小鳥さん!何やってるんですか!」
 という声に遮られた。
 「申し訳ありませんが、セールスならお断りです。お引き取り下さい。」
 奥から出てきた知的なメガネ美女がキッパリとした態度で彼の説明を拒否した。
 「ちょっと律子さん。そんなに強く言わなくても・・・。」
 「そんなこと言って、この前も浄水器を買わされそうになってたじゃないですか!」
 「うう・・・。」
 事務員達の話を聞きながら、セールスは望み薄だと感じた彼は
 「では、資料を置いて行きますので、是非ともご検討下さい。宜しくお願い致します。失礼致しました。」
 と立ち去ろうとしたが、一つ聞きたいことがあったのを思い出して
 「あの、一つだけお聞きしたいのですが。」
 と事務員に言った。
 「まだ何か?」
 メガネの事務員が不機嫌そうに応じた。
 「こちらはどういったお仕事をされているんですか?」

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